2016年がまもなく終わろうとしています。皆さんにとってこの1年はどのような年だったでしょうか。年末年始には、日本のあるいは世界がどうであったか、これからどうなるのか、といった各種メディアの特集やそれに寄せるアナリスト(専門家、分析家)と呼ばれる人たちの発言を見聞きすることもあるでしょう。しかし、2016年世界はそうした専門家をもってしても予見できなかった方向に向かいました。
【写真:クリスマス会ために家から野菜を持参(カンボジアの子どたち)】
英国のEU圏離脱決定、米国の大統領選挙結果が、瞬間的にせよ世界経済の先行きに不安を与えました。庶民の私たちにも「まさか」であったわけですが、国のあり方を動かすほどの変化の背景には民衆の大きな力が働いたと感じざるを得ません。いま隣国でも国のリーダーの不正疑惑を糾弾する民衆の声が高まっています。隣人として祈るばかりです。
歌手の安室奈美恵さんの「Get myself back again」という曲のサビの一部にこのような歌詞があります。「...こんなにも世界は綺麗なのに 黒い感情抑えられず正義とすり替えてた Get myself back again 傷つくために生まれてきたんじゃない」
本来は信頼し合っていけるはずの友や仲間とうまくやっていけない自分、怒りや赦せないという黒い感情を正義にすり替えて、友も自分も傷つけていた、だからもう一度本来の自分を取り戻そう(Get myself back again)という思いが込められています。
新たなリーダーを選んで自分たちの国のあり方を変えようとする民衆の正義の矛先が、国を追われた難民の排斥にも向かっていることに、抑えられない黒い感情の高まり、危うさを感じます。「共に生きる」、「愛し合う」という人間本来の生き方が難しい時代になろうとしています。私たちの中にも黒い感情があります。だからこそ本来の自分を見失わないようにしたいのです。
『愛の書』とよばれている聖書のコリント人への手紙に「愛は寛容であり、愛は親切です。...自分の利益を求めず、怒らず、人の悪を思わず、不正を喜ばずに真理を喜びます」ということばがあります。神様は人間本来の生き方を貫くためには「愛」が一番大切であると、教えてくださっています。時代がどのように激しく動いたとしても、隣人もそして自分も愛する人でありたいと願います。
この1年皆様の「愛」のささげものによって共に生きる世界が実践されていきました。心より感謝いたします。
日本国際飢餓対策機構 広報主任 鶴浦弘敏
(12月号巻頭言No.317)