2017年07月08日

【フィリピン/HOLPFI報告】子どもたちを学校に行かせたい


フィリピン・ミンドロ島サバン村マイ地区におけるハンズ・オブ・ラブ・フィリピン(=HOLPFHI)の新たな支援について酒井保・慶子駐在員からの報告です。

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マイ地区の人々に寄り添い励ます
ハンズ・オブ・ラブ・フィリピンのアプローチ

これまでの経緯

 2013年、パートナーであるマンヤン福音教会連合MTCA(ミンドロ島にある原住民マンヤンの福音教会の集まり)のリーダーと連絡をとりながら、新たな支援地の調査をしました。5つあった候補地を10日間かけて回り、その中から東ミンドロ州ピナマラヤン県サバン村マイ地区を選びました。
 この地区の人々は基本的に自給自足の生活で、農地からの収穫物とバナナ、ランブータン等の果物を売ることで必要な現金収入を得ています。山の中でひっそりと暮らしていたのですが、近年タガログの人たちが山奥まで開発の手を伸ばすようになり、その急激な環境の変化に戸惑い、このままでは今までのように生活していけないという危機感を持っています。村には教育を受けた人たちが何人かいたことで、この変化に対応していくには子どもたちに教育の機会を得させるしかないと考え、彼らなりのチャレンジを始めていました。
 マイ地区から最寄りの小学校まで徒歩で山道を3時間、水位の変化が激しい川沿いを歩かなければならないので、子どもたちが通学するのは現実的ではありません。成人の識字率は思いのほか高かったのですが、子どもたちのほとんどは教育を受ける機会がありませんでした。子どもには、原住民向けの識字教育を最寄りの村からボランティアの方が不定期に来て行なっているだけでした。
お父さん.jpg「子どもたちに教育の機会を与えたい!」HOLPFIのフィリピン人スタッフが村を訪れたときにコミュニティのリーダーから聞いた言葉です。村では以前、学校の近くに寄宿舎を自分たちで建ててそこから子どもを通わせたり、親戚や理解のあるタガログの人に子どもを預かってもらって学校に通わせたりしました。しかし長続きせず行き詰まっていました。そのことを知っていたMTCAのリーダーが私たちに紹介をしたことで彼らとの交流が始まりました。2013/14年はこのマイ村をフィリピン人スタッフが不定期に訪問して村人と交流をはかり、私たちの団体について知ってもらう努力を続けました。2015年9月、日本人も来ても良いということで私も初めて訪問することができました。

マイ地区の現状

 マイ地区は35世帯150人ほどの村で、半数は12歳以下の子どもです。訪問した時4人のお母さんが1歳までの子どもを昨年亡くしたと聞きました。昼間は両親とも畑仕事に出ており、年長の子どもが赤ん坊の面倒をみていました。
 政府の記録や訪問の調査で村の概要は知ることはできましたが、村の人たちに自らの村の現状を知ってもらいたいと願い、PRA(参加型農村調査法)を用いて村の地図を作成してもらいました。その後リーダーたちからの要望で、リーダーシップトレーニングを行いました。SALTY(ソルティ、NL4月No.321号巻頭言参照)LIGHTS(ライツ:NL5月No.322号巻頭言参照)を行い、リーダーがまず変わっていかなければ地域の変革は起きないことを学んでもらいました。そして、村人一人一人が役割を担って進めていくことの大切さ、出来ることから始めて行くことの必要性を学んでもらいました。また自分たちが目指す将来像(ビジョン)を作ってもらい、まず何から始めていくかということでお母さん方の声が反映され、掃除プロジェクトが実施されました。1日で達成予定のプロジェクトでしたが、来なかった人たちもいて村の半分しかきれいになりませんでした。後日残りの半分を行なったのですが、日数がたった結果、前回掃除したところはまた汚れていて、お母さん方からがっかりした声が漏れていました。
お掃除プロジェクト3.jpg

気づきから意識改革へ

 このプロジェクトは継続されず、その理由を知るためにモニタリングを実施しました。村のリーダーから出た言葉は「掃除をしないのは私たちの文化だから」。自給自足の生活をしていた彼らは、掃除などしなくても出たゴミはある程度時間がたてば自然に分解されますし、残飯などは鶏や豚の餌となります。現在村を汚しているのは家畜が食べない生ごみとプラスチックゴミです。お母さん方はそのことに問題意識を持っていたわけですが、リーダーはそうではありませんでした。必要性が腑に落ちていなければ、継続は期待できません。 
 その後の計画の中には掃除は入っていませんでした。子どもを学校に行かせるために始めた寄宿舎も、地域をきれいにすることも続かなかった根本原因について、村人一人一人が気付いてはいないのです。
 エバ.jpgまずはリーダーが問題意識をもち、その原因がどこにあるか理解してもらうのが私たちの役割です。学校が始まれば人々は新しい出来事に向かい合っていかなければならないでしょう。その変化に対応できるように今後も働きかけていきたいと願っています。【写真】今年の食料デーで来日、活動報告をする予定のHOLPFHIスタッフのエバ(報告は、中部・関西地区で開催される食料デー大会など)

マイ地区の人々の地域変革を応援してください
支援は郵便振替00170-9-68590日本国際飢餓対策機構記入欄に「ハンズ・オブ・ラブ・フィリピン」と明記ください。
こちらから酒井保・慶子駐在員を継続支援することもできます。

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