2016年06月07日
【ラテンアメリカの人々とともに(5)】熱狂の中での弊害
ラテンアメリカの国々では毎年盛大にカーニバル(お祭り)が実施されます。最大のものはブラジル・リオデジャネイロのサンバ・カーニバルでしょう。カーニバルは元来カトリック教会の「謝肉祭」のことで、復活祭前の40日間肉を断ち禁欲的な生活を送る前、肉食に別れを告げるための宗教的儀式とされています。
熱狂の中での弊害
ボリビアのオルロで行なわれるカーニバルは、リオやペルー・クスコのインティ・ライミ祭りと並ぶ南米3大祭りの一つで、ユネスコの無形文化遺産です。元々は先住民族であるアイマラ族やケチュア族が持っていたパチャママ(地母神)信仰がカトリックの聖母マリア信仰と結びつき、この創造の母に捧げるものとして始まったとされ、またスペイン人侵略者を悪魔(ディアブロ: diablo)と重ね合わせ、恐れを持って踊りに表したと考えられています。人々はこの期間とその前の数週間は水掛けのいたずらをします。見知らぬ人に対して、通りがかりに水鉄砲やバケツなどで水をかけたり、水を詰めたゴム風船を投げつけたり、泡スプレーを吹きかけたりします。いたずらを楽しむ程度ならいいのですが、様々な弊害があります。
以前ペルーでアパートの数階上から投げた水風船が頭部を直撃したことが原因の死亡事故がありました。またパレードの混雑を悪用してスリや泡スプレーで目つぶしをした間に貴重品を盗むという事件がボリビアでも急増しています(私もこの手口でデジカメを盗まれました)。またボリビアでは各地で同様のパレードが行われ、コチャバンバでは祝日の最終日に公共機関の多くが機能停止状態になりました。
治安悪化と散財
この行事は観光産業として莫大なお金が動く時であり、過度の飲酒による急性アルコール中毒の他、ケンカ、交通事故、性犯罪、盗み、強盗など様々な犯罪が増加し治安が悪化する時期でもあります。1年の収入の大部分を高額な衣装代に散財する人々が多くいる一方、自国の貧しく苦しんでいる人々には手を差し伸べることをしない人々のなんと多いことか...。元来の信仰的な意味とは裏腹な事が毎年繰り返されている、という現状を人々が真摯に受け止めて"まず自分から変わろう"と決心し行動に移して下さることを願っています。
(ボリビア駐在:小西小百合)
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