NO.231
特命大使 神田英輔

「もしハチが地球上から消えてしまうと、人類は4年たたないうちに滅びてしまう」。これはアインシュタインが言ったとされている有名な文章です。2006年の秋以来、米国では巣箱のミツバチが忽然と消える「蜂群崩壊症候群」(CCD)と呼ばれる不可解なことが発生し、ミツバチが壊滅状態になっていると報じられています。原因は特定されていないようですが、乱用されてきた農薬や携帯電話・電磁波の影響が大きいのではないかと言われています。
私が毎年訪問する北カリフォルニアでは、2月から3月にかけてアーモンド畑は花盛りです。受粉のために600億匹近いミツバチが動員されるそうです。米国ではアーモンドのみならず、100種以上、農作物の80%の商業的生産がミツバチの媒介に依存していると言われていますので、ミツバチが消えることは、田畑が不毛の地となることを意味します。
このハチが日本からも減っているのです。もともとハチミツ用として明治時代に海外から導入されたセイヨウミツバチですが、近年では養蜂業者が農家に貸し出し、ハウスでの授粉作業に利用されています。ハチの導入によって農家は省力化とコスト削減が可能になり、スイカやイチゴ、ナシ、トマトなど安価な野菜や果物を提供できるようになったのです。
2008年にIUCN(国際自然保護連合)がまとめた「レッドリスト」には、絶滅の恐れの高い8,462種の野生動物と、8,457種の植物がリストアップされています。生物の多様性という「資源」が提供してくれる恩恵は、私たちに食料を供給し、私たちの生活を支えてきているのですが、先進工業国の生活スタイルとなった「経済至上主義」からでてくる大量生産・大量消費・大量廃棄は、野生生物たちが生きていけない環境を作り出し、私たち人類の未来に暗い影を投げかけています。私たちの生き方が問われているのです。
「私たちは何一つこの世に持って来なかったし、また何一つ持って出ることもできません。
衣食があれば、それで満足すべきです」