NO.228
特命大使 神田英輔

「吾唯足知」の文字が刻印されたつくばい(京都龍安寺)
先日テレビの特集番組で、アフリカのナミビア沖での環境破壊の様子が紹介されていました。魚の乱獲によって海の生態系が乱れ、プランクトンが異常発生。その死骸が海底に蓄
積してメタンガスが溜まり、それが突如爆発して硫化水素が発生したのです。大量の魚が死んで岸に打ち上げられたというドキュメンタリーでした。大変な状況です。
先進工業国の私たちの旺盛な経済活動は、私たち自身を脅威に追い込んできました。森林の乱伐などによって、世界で二酸化炭素の量が増え、地球の温暖化が大問題になり、異常気象はいまや日常化しています。持続可能であった素晴らしいこの世界を、欲に目がくらんだ私たちが崩壊させてきたのです。有限な世界で無限の成長を願うこと自体が間違いだったということに多くの人々が気づいてきています。
日本はこれまで米国と共に世界経済の牽引役としての歩みを続け、大量生産と大量消費によって右肩上がりの経済成長を達成してきました。人よりたくさんの物を「もっともっと」
自分のものにすることによって幸せになれるのだという価値観を背景に、日本における一人当たりのGDPは増え、物の豊かさを達成しましたが、一方で、ここ10年間で自殺者は年間
3万人を超し、うつ病が蔓延し、幸せを感じる人の数はどんどん減少しているという事態が起きているのです。
昨年秋以来、世界の景気が急速に冷え込み、貿易収支が28年ぶりに年間を通して赤字になった日本です。「もっともっと」から「今持っているもので満足する生き方」に転換することを国をあげて取り組むことが求められています。持続可能な生き方は、私たち自身を守り、結局は開発途上国の方々の生活を守り、人類の未来を守ることにつながるのです。
「しかし、満ち足りる心を伴う敬虔こそ、大きな利益を受ける道です。
私たちは何一つこの世に持って来なかったし、また何一つ持って出ることもできません。
衣食があれば、それで満足すべきです」