芸術を通して、インドの社会的課題を啓発する現地団体「ソルト・イニシアティブ」と協働しています。2008年も芸術家たちが一同に集まって、一つのテーマで作品を創りました。2008年のテーマは「男性と女性」。インドの女性たちが直面している性差別、男女の性への正しい認識を伝える様々な作品が創られました。作品は、ギャラリーや学校での展示など、年間を通じた啓発に用いられていきます。ワークショップは、今年秋にも実施予定。
インドの首都ニューデリーでは、5人に一人の女児が堕胎されていると報告されています。その背景にはインドの悪慣習「ダウリー」(花嫁に課せられる多額の結納金)が関係しています。その根底にある性差別への意識改革を行い、インド社会全体にインパクトを与え、社会変革していくことを目指す現地団体「ソルト・イニシアティブ」と協働しています。病院や学校、大学、キリスト教会などを巻き込んだ様々な啓発活動が行われると共に、また芸術家たちとも協働して、絵画や歌を通して社会に訴えています。
インドの首都デリーを含むインド北西部では、5人に一人の女児が堕胎されていると言われています。インドの中でも最も堕胎率が高いパンジャブ州では、約4人に一人の女児が胎児のまま殺されています。また、インド全体では約50万人の女児の胎児が毎年殺されているとも見積もられています。
その背景には、インドの慣習「ダウリー(結婚する際、花嫁の両親が多額の持参金を花婿に支払う風習)」が関係しており、この因習が女性差別を助長し、女児堕胎を引き起こしています。また、この慣習は多額の金品が関与する事から、胎児だけではなく、家族が娘や嫁を殺害するという事態も招いています。

数え切れないほどの女児の中絶によって流れされた血が、インドの地に重くのしかかっているという夢を見たインド人男性(ラージ・モンドール氏)によって、悔い改めと癒しの思いを込めて、このプログラムは、2008年1月より始められました。

女児中絶問題を切り口として、「ダウリー」についての問いかけ、そして、最終的には、このような性差別に対する人々の「意識改革」ということにあります。病院、学校や大学に呼びかけ、この問題に積極的に関わっていく事ができるように、訓練やセミナー、ワークショップ、キャンペーン活動を行っています。その他にも、画家やミュージシャンなどの芸術家たちと、その作品を通して、女性も男性も等しく命が与えられているという、命の尊厳を提示し、人々の意識改革を目指します。また、地域団体や女児中絶運動グループとも協働していきます。
インド社会のカルマ(因果応報)の考えの中で、知的障がい、精神障がいをもったこどもたちは「本人の前世の報い」などと見られます。そのような中で、現地団体アシシ障がい児スクールは、自閉症のこどもたちとその家族に「一人一人は高価で尊い存在なのだ」という真理を分かち合うために運営されています。28名の生徒たちが個々に合わせた特別授業、言語療法、作業療法を受けており、保護者を対象としたカウンセリングも行われています。
インドには200万~400万人の自閉症患者がいると言われています。しかし、インドでは、そのような自閉症患者への理解がされておらず、身体障がいではない自閉症などの精神障がいや知的障がいを持つ人々は、未だに障がい者としてほとんど認識されていません。代わりに、このような障がいを持った人々への理解は、カルマ(因果応報)の考えの中で、「本人の前世の報い」や「失敗した子ども」と見られてしまいます。このような歪められた価値観の中で、自閉症患者やその家族は、社会の中から疎外されていく現実の中で生きています。
自閉症の息子を持つギータ・モンドール氏によって2007年4月より、インド・西デリーに「アシシ障がい児スクール」(アシシは、ヒンズー語で『祝福された』の意)が始められました。

スクールでは、障がいを持つ子どもたち(特に自閉症の子ども)も、目的を持って創られ、一人一人はユニークな存在であると言う価値観の下に、全人的な教育と支援を行ない、家族へのカウンセリングを行います。また、貧困家庭から来ている子供たちには、必要に応じて奨学金が支給されています。
アシシスクールでの活動の他に、彼らの住む地域の中で、障がい児への誤った認識を変え、彼らとその家族、また地域に住む人々が共に励まし合い、子供たちを共に育てていく事が出来るように、ワークショップや研修会などが行われています。

2007年度には、17名の生徒が学校に入学しました。このうち、8名の生徒が奨学金を受けることが出来ました。子供たちは、4人ずつで1クラスになり、作業療法や言語療法なども取り入れられた個々の生徒に合わせたカリキュラムの中で、生徒たちは楽しんで学校に通いました。また、5月からは、年長の生徒を対象として、職業教育プログラムが始まりました。生徒たちは、クリスマス飾りやコースターなどの雑貨を作成し、それで得た収入を管理するという一連の活動を通して、社会で生活していくための言葉使いや身なり、管理方法などを学びました。
また、生徒たちの親たちが集まり、保護者支援グループができました。月に1回集まり、それぞれの悩みや葛藤を保護者同士で分かち合うことによって、それぞれから学びあい、励ましあう良い機会となりました。

12歳のシバニは、知能発育不全・軽度のダウン症です。両親が、シバニを初めて学校に連れてきた時には、噛み付いたり、蹴ったり、たたいたりなど、暴力的な行為が見られ、それを、親が「間抜け」「馬鹿」と、彼女を罵倒している姿が見られました。また、彼女の両親は、一度も彼女を医者には連れて行ったことがなく、彼女の体には、あざや引っかき傷など、家で虐待を受けた跡がありました。彼女の両親の病気への理解がとても低いことがうかがえました。
まず、最初の1ヶ月間、彼女の行動について集中的にケアするプログラムを行いました。1ヵ月後になると、彼女の振る舞いに、驚くべき変化が見られてきました。彼女に、噛み付きや蹴るなどの暴力行為が見られなくなりました。また、言語療法や作業療法などの体験型学習プログラムを始めると、彼女はすばやく学んでいきました。治療が進むに連れ、彼女の暴力的な行為は、「理解してもらえない」、また、「低い自己評価」と言った欲求不満が彼女を暴力的な行為へと走らせていることが分かりました。これは、シバニだけの問題ではないので、彼女の両親へのカウンセリング、教育が必要です。しかし、シバニの両親は、保護者支援グループにも参加しておらず、彼らは、障がいのある、しかも女の子には、お金や時間をかけることは、無駄なことだと考えていました。けれども彼女の母親は、スタッフからの説得により、カウンセリングを受け始めました。
現在、シバニには、暴力的な行為は一切見られなくなり、むしろ、自分より小さい生徒の面倒を、「小さいお母さん」のようにみる姿までみられるようになりました。彼女の両親にも、シバニに見られたような驚くべき変化が見られ、彼女を素晴らしい存在として受け入れていくことができるようにと願っています。